CRMにはクラウド型サービスを選択する
まず店舗運営を始めたばかりの頃や、既に運営している人でもこれから顧客管理を本格的に検討する方にとって、「顧客データをどのように管理すればいいのか」という悩みはつきものです。
昨今のCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント) = 顧客管理を目的としたシステム、は、クラウド型サービスであれば無料で使えるものもあり、またその多くは、店舗の成長にあわせて有料版へステップアップすることで、多彩な機能を拡張できるようになっています。
そのように安価で手頃、かつ将来規模が大きくなっても安心できるよう、基本CRMにはクラウド型サービスを選んでおきましょう。
そしてその中でも、特におすすめする Hubspot(ハブスポット) についてここでは解説します。
顧客管理をはじめたい、既存の方法からステップアップしたい、といった方のメリットになるポイントをピックアップしましたので、無料版で使える範囲を中心に掲載しています。
それではチェックしていきましょう。
無料でも十分な機能
このサービスは無料でアカウントを作成し、すぐに使い始めることができますが、無料のままでも十分な機能を備えています。
顧客データベースづくり、管理、メモ
一番使用する機能として「顧客情報をまとめたデータベースづくり」が挙げられるでしょう。Hubspotでは “コンタクト” と呼ばれる機能の中で、顧客名、メールアドレス、各担当者からのメモ、アクセス記録などを一元管理することが可能です。
画像では左側サイドバーの中に、メールアドレスや社内担当者名の記載がありますが、自由に変更することができ、住所、店舗独自のプロパティ(”項目”のこと。例えば会員ランク、好みのフレーバー、といった顧客情報として集めておきたい事)など、任意の作成と表示変更ができます。
誰が見ても一目で顧客の状態が把握できるようになり、初めての担当者でも比較的スムーズに、顧客に迷惑をかけることなく案内することが可能になります。
問い合わせフォーム(埋め込み版 / ポップアップ版)の作成、管理
店舗運営で何かと便利に使えるのが「問い合わせフォーム」です。
無料版には”このフォームはHubSpotの無料ツールによって作られています”という表記がされてしまいますが、機能としてまずは十分でしょう(有料版にすることで削除もできます)。
一般的な問い合わせフォームとして利用することもできますが、イベント参加者の収集、アンケート収集、予約収集など、Eメールアドレスと顧客名を集める目的の営業活動全般に流用することができるでしょう。
メールマガジンの購読等のチェックボックスの作成も可能なので、読者獲得に使う事もでき、プライバシーポリシーの承諾項目の反映(英文ですが、日本語に編集が可能)なども容易に行うことができます。
メールマガジンの登録を促したい場合には、埋め込み式ではなく、ポップアップ形式を選ぶと良いでしょう。
その場合は、ウェブサイトにHubspotのコードを埋め込む必要がありますが、「hubspot 埋め込み」などで検索すると簡単に見つかります。
例. 外部サイト上にHubSpotフォームを埋め込み、スタイルを設定する (Hubspot公式サイト)
なおHubspotには「フリガナ」機能は本記事作成時点で存在しないため、顧客名の漢字の読み方がわかるよう、フリガナとして使うプロパティ(項目)を1つ用意しておき、顧客名の入力欄に添えておくと便利です。
マーケティングEメール(メールマガジン)が2000通/月まで送信できる
※送信限度数は、本記事作成時の情報です。最新の内容はサービス提供ページを直接ご確認ください。
フォームや実店舗内でEメールアドレスを獲得したら、メールマガジンの配信を行いましょう。ここではブログ作成と同じように直感的に、パーツをドラッグ&ドロップするだけで、十分伝わるメールマガジンを作成することができます。
各ブロックは、テキスト、画像、ボタン、動画(YoutubeやVimeoなどへのリンク)、SNSアイコンとそのリンクなどが標準で用意されており、HTMLに詳しい方であれば直接コードを記載してお好みのレイアウトが表現できるパーツもあります。
※フォーム同様、無料版にはHubspotのロゴが表示されます。
生成AIによる下書き作成が可能
さらに無料機能の範囲内で、メールマガジンを作成する際のコンテンツのヒントが得られます。
AIによる文章作成機能をONにすると、タイトルからそれに関連する文章を自動生成することが可能です。最終的にはご自身で調整することをお勧めしますが、業務の時間短縮にはとても有効な機能です。
無料のWEBページとブログを、独自ドメインで運営できる(ページ数制限あり
既に実店舗のECサイトを運営していて、ウェブサイトのドメインをお持ちの場合、そのサブドメインを利用してHubspot内でWEBページやブログページの運営が可能です。(例. sample.com の場合、blog.sample.com のように”blog=サブドメイン”を頭に付けた別サイトを作る)
Hubspotのロゴが表示されるなど、一部ブランディングの観点から考えるとマイナスな面もありますが、そのような細かい点を除けば、無料でも十分機能するでしょう。
左のサイドバーからパーツを選び、ドラッグ&ドロップでページを作っていくため、直感的で作りやすく、また操作感がメールマガジンの作成と同じなので、メールマガジンの作成担当者が兼任する事も可能です。
製品の登録と見積書の作成して印刷したり、閲覧URLを作成できる
もしご自身の店舗で、見積もり作成をするためのサービスを導入していない場合、このような機能も有用でしょう。
Hubspotでは、「製品」機能で自身の店舗で取り扱いう製品のマスターデータを作成することができ、「見積もり」機能からその製品を登録。特定のコンタクト宛に見積書を発行することができます。
無料版の見積書レイアウトは非常にシンプルですが、最小限の機能は備えており、また見積書をメールで送るためのURLも生成が可能です。
将来利用を拡大する際には、有料版への切り替えと自身のブランディングを意識したレイアウトに変更できることもうれしいポイントです。
チャットボット機能が使える
自社サイトや店舗のブログを運営している方の中には、チャット機能を実装したいと思っている人もいるのではないでしょうか。
例えば、指定のページを見ている顧客に向けたチャット機能(”一定期間後、お困りごとがあればこちらから、のようなチャットを表示)などです。
Hubspotでは無料であっても、基本的なチャット機能が利用可能です。挨拶のメッセージと、顧客が情報を書き込んだ後に表示させるメッセージを登録が可能です。他のチャットサービスとの違いは、Hubspotで顧客管理をしているため、チャットの問い合わせややり取りがすべて、顧客データベースづくり、管理、メモ
またどのページで表示させたいか、表示させたくないか、の出し分けについても「対象」の項目内で細かく指定が可能になっています。
有料版ではIF/THEN分岐(顧客の回答により、チャットの回答を出し分け、表示させる内容パターンを変えていく)等も可能なので、業務の拡大に合わせて拡張できるメリットもあります。
なお自社サイトや店舗ブログ等で使う場合は、ポップアップフォーム同様、ウェブサイトにHubspotのコードを埋め込む必要があります。
「hubspot 埋め込み」などで検索すると簡単に見つかります。
例. 外部サイト上にHubSpotフォームを埋め込み、スタイルを設定する (Hubspot公式サイト)
※これ以外にも、多数のCRM導入サービス提供会社が解説していますので、容易にヒントを得られやすい点もメリットです。
WordPress標準連携アプリがある
自社サイトや実店舗のブログをWordPressで作成していた場合、無料の標準連携アプリが出ています。
Hubspotのマーケットプレイスから検索することが可能です。
リンクはこちら:HubSpot for WordPress
これによりWordPress内部でコンタクトの管理や、フォーム送信用ページを作成、WordPressの固定ページとして公開する等が簡単に行えるようになります。
実店舗のオンラインストアにおすすめ「Shopify」と相性が良い。
実店舗でオンラインストアを導入したいと思ったら、まずは「Shopify(ショッピファイ)」が安価で機能も充実しており、おすすめです。
このHubspotならShopifyと無料で標準連携が可能です。
Shopifyで作成したサイトで注文が入ると、「顧客情報」および「取引記録」が自動で作成されます。取引記録には、購入した商品や金額も含まれます。
またShopifyのショッピングカート内でメールマガジンの登録を希望した場合、その情報もあわせて取り込まれます。
オンライン上での顧客情報をHubspot内で一元管理することで、顧客からの問い合わせに対して、ストレスを与えない優れたサービスを提供することができるでしょう。
無料で使える生成AIが便利
メールマガジンのトピックでも記載した通り、本記事を作成している現在、Hubspotでは日本語利用が可能な生成AIの機能が順次アップデートされています。
メールマガジンのタイトル、リード文はもちろん、ブログのコンテンツ作成のヒントも得ることができるようになっています。
また生成した文章の”トーン”を選択することもでき、フレンドリーな文章か、専門的な文章か等を決められます。
最後は店舗運営者の判断により、微調整が必要であることをおすすめしますが、多様な業務を抱える実店舗の従業員にとって有効活用できる機能であることは間違いないでしょう。
さらに知りたい場合は下記の記事も参考になります。