クレーム対応において適切な言い回しや表現を使うことは、顧客満足度を左右する大切な要素。
特に現場に立つスタッフにとっては、瞬時の判断で適切な表現を選ぶ力が求められますよね。
プロフェッショナルとして信頼を得るための「クレーム対応の言い回し」とその活用方法を紹介し、現場で実際に役立つ5つのシーン別フレーズと、その使い方を詳しく解説していきます。
謝罪時に使える表現とその効果的な使い方

お客様が不快な思いをされた際、まず必要なのが誠意ある謝罪です。
その際の言い回し一つで、信頼回復のスピードは大きく変わります。
お詫びの基本:「申し訳ございません」「ご不便をおかけしました」
基本の謝罪フレーズとしては、「申し訳ございません」や「ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません」などがあります。これらはどんな状況でも使いやすく、丁寧な印象を与えますよね。
「ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません」
謝罪の中でも最もスタンダードな表現です。
形式的になりがちですが、落ち着いたトーンと真剣な表情とともに述べることで、謝罪の誠意を伝えることができます。
「心よりお詫び申し上げます」
書面やフォーマルなシーンでよく用いられる表現です。言葉ではあまり言いませんが、メールの場合はよく使います。丁寧さと形式を兼ね備え、ビジネス上の重大な不備にも適した言い回しです。
相手の立場に立つ:「おっしゃる通りです」「お気持ち、よく分かります」
感情に寄り添う姿勢を見せることで、相手の怒りの温度を下げやすくなります。
特に「お気持ち、よく分かります」といった共感の表現は、心を開いてもらう第一歩です。
「お気持ち、よく分かります」
共感の王道フレーズです。お客様の感情に真摯に寄り添うことで、「分かってくれている」と感じてもらいやすくなります。
「ご不快な思いをさせてしまい、大変心苦しく存じます」
共感と謝罪を同時に伝えるフレーズで、相手の立場をしっかり受け止めていることを示します。
「おっしゃる通りでございます」
相手の主張を正面から受け止める姿勢を見せる言い回しです。否定せずまずは受け入れることが、次の対応への信頼を生みます。
責任の所在を明確に:「弊社の不手際です」「手配に不備がございました」
責任を曖昧にせず、はっきりと認める姿勢が信頼につながります。
「原因を調査中です」だけで済ませてしまうと、印象が悪くなってしまうかもしれません。
ただ自社の責任ではないこと、によるクレームも多くありますので、その場合は非を認めるような発言は避けた方がいいでしょう。最初にまとめた「ご迷惑をおかけしていること」に対して謝罪をする、を意識する必要があります。
「弊社の手続きに不備がございました」
自社の過失を明確にしつつ、堅実な印象を残すフレーズです。問題の発生源が企業側にあることを率直に認めます。
「担当者の説明が不十分であったと認識しております」
具体的な問題点を認識していることを示すことで、信頼感を高めることができます。
「社内での確認体制に不備がありました」
内部体制の問題を認める表現です。再発防止に向けた取り組みの布石にもなりえます。
メールテンプレート 初期対応と提案
ではこれらのワードを使ったメールテンプレートを作成してみましょう。
件名:商品発送の遅延に関するお詫び
○○様
いつも弊社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
○○株式会社カスタマーサポートの△△でございます。このたびは、ご注文いただきました商品「○○○○」の発送が予定より遅延し、○○様にはご不便とご心配をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。
お客様におかれましては、商品到着を心待ちにされていたことと存じます。そのような中でこのようなご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳なく、心苦しく感じております。
今回の遅延は、弊社の出荷準備体制に不備があったことに起因しております。
社内でも早急に原因を確認し、今後は同様の事象が発生しないよう、出荷工程の見直しと管理体制の強化に努めてまいります。~~ここから今後の具体的な対応や解決策を提案する~~
このたびの不手際、重ねてお詫び申し上げますとともに、引き続きご愛顧賜りますようお願い申し上げます。
状況説明で使える言い回しと誤解を避けるコツ
クレーム対応では、現状や今後の対応方針を丁寧に説明することも重要です。
説明不足はさらなる不満につながるリスクがありますし、消費者がクレーム対応において「絶対に許せない」と感じる行為として、最も多かったのが「たらい回し」(41.8%)でした。

正直な状況報告:「ただいま確認中でございます」「原因を調査しております」
現在の状況が把握しきれていない場合でも、正直に現状を伝える姿勢が信頼につながります。
これしか言えない..,という状況もあるとは思いますが、なるべく曖昧な表現を避けることが大切です。
「ただいま担当部署にて確認を進めております」
進行中であることを示すことで、対応が止まっていないと印象づけることができます。
「現在、原因を精査中でございます」
「調査中です」よりも少し具体的な印象を与える表現で、丁寧さも保たれています。
「詳細が判明次第、すぐにご連絡いたします」
対応への積極性を感じさせるフレーズで、お客様の不安を和らげる効果があります。
今後の方針提示:「●●までにご連絡いたします」「明日中に対応を完了いたします」
先の見通しを明確に示すことで、お客様の不安感や不信感を減らすことができます。この「いつまでに」というワードと、それをしっかり守るルール、はとても大切です。
「本日中に担当者よりお電話差し上げます」
具体的な時間軸を伝えることで、相手に安心感を持ってもらえます。
「明日17時までに再度ご連絡させていただきます」
期限付きの対応は信頼構築の基本です。あいまいな「できるだけ早く」は避けましょう。
「●●の処理を終え次第、追ってご案内を差し上げます」
対応順序を示すことで、段階的な進捗の可視化につながります。
言い換え力:「故障」よりも「不具合」、「キャンセル」よりも「変更」
ネガティブな印象を与える言葉を、より柔らかい表現に言い換えることで、クレームの温度を下げる効果があります。
「一部機能に不具合が生じております」
「故障」よりも受け入れやすく、過度な不安を与えない言い回しです。
「ご予約内容の一部を変更させていただきました」
「キャンセル」と言うと印象が強くなるため、「変更」や「調整」を使うと良いでしょう。
「手配に一部遅延が出ておりますが、順次対応を進めております」
問題があることを伝えつつも、前向きな姿勢を加えることで印象が柔らかくなります。
メールテンプレート 状況説明

ではこのトピックのメール例を見ていきましょう。
件名:ご指摘いただいた件に関するご報告と対応について
○○様
いつもご利用いただき誠にありがとうございます。
○○株式会社カスタマーサポートの△△でございます。このたびは、当社サービスに関しましてご不便をおかけしておりますこと、深くお詫び申し上げます。
現在の状況につきましては、担当部署にて原因を精査中でございます。具体的な要因については、現在詳細を確認している段階であり、確認が取れ次第、すぐにご連絡を差し上げる予定でございます。
なお、今後の対応につきましては、本日中に一度ご報告のメールを差し上げる予定で準備を進めております。お客様のご不安を少しでも軽減できますよう、できる限り迅速かつ正確な対応を心掛けております。
また、当初のご案内に一部「変更」が生じておりますが、これに伴いお客様のご要望が適切に反映されるよう、手配を進めております。万一他の点においてもご不明な点やご不安がございましたら、何なりとお申し付けください。
重ねてのご不便、誠に申し訳ございません。引き続き誠意をもって対応させていただきますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
お客様の不満に寄り添うクッション言葉と共感表現
クレーム対応では、内容の正当性よりも「気持ちに寄り添った対応ができているか」が評価されるケースが多くあります。
特に初期対応の場面では、相手の感情を逆撫でしない言葉遣いが重要です。クッション言葉や共感の表現は、緊張感を和らげ、対話をスムーズに進める鍵となりますよね。
また、適切なタイミングでこれらを用いることで、お客様の怒りを落ち着かせ、冷静なコミュニケーションへの橋渡しが可能になります。
クッション言葉:「恐れ入りますが」「お手数ですが」「差し支えなければ」
話し始める前にワンクッションを入れるだけで、印象は柔らかくなります。ビジネス会話では基本中の基本ですよね。
共感+謝罪:「そのような状況でご不快な思いをされたこと、お察しいたします」
共感と謝罪をセットにすると、より誠意が伝わります。テンプレートとして覚えておくと便利です。
積極的傾聴:「ご意見、しっかり承りました」「詳しく教えていただき、ありがとうございます」
話をしっかりと受け止めている姿勢を示すことで、相手も安心して話すことができます。これは、プロとしての対応力の一つです。
再発防止と信頼回復につなげる表現とは?
クレームが発生した際、ただ謝罪するだけで終わってしまっていないでしょうか?
実はお客様が最も求めているのは「二度と同じことが起きないこと」かもしれません。よく「私はいいけど、他の人に同じようなことがあったら…」とおっしゃるケースに覚えはありませんでしょうか。
そのためには、問題を真摯に受け止め、再発防止に向けた取り組みを明確な言葉で伝えることが大切です。
こうした姿勢は企業としての誠意を示すだけでなく、信頼回復への第一歩ともなります。
改善の約束:「今後はこのようなことのないよう、対策を講じてまいります」
「改善します」だけでは抽象的すぎるので、「●●を見直します」「チェック体制を強化します」など、具体性を持たせましょう。
内部共有の強調:「いただいたご意見は社内で共有いたします」
お客様の声が活かされることを伝えると、誠意ある対応として評価されます。
とはいえ、実際に社内共有がされているかどうかは、お客様には見えませんから、言葉の力が重要です。
結果報告:「対応の結果につきましては、改めてご報告いたします」
最後まで対応する姿勢を見せることで、「ここまでやってくれるんだ」という印象を持っていただけるのではないでしょうか。
店長の仕事:クレーム対応の本質は“信頼回復”にある
クレーム対応において最も大切なのは、顧客との信頼関係をいかに早く、深く、再構築できるかです。
そのためには、表面的なテンプレート対応ではなく、一人ひとりのお客様に寄り添った言い回しを選ぶことが求められます。
クレームは改善のチャンス:「ご指摘ありがとうございます」を心から言えるか
お客様のクレームは、自社の改善点を教えてくれる貴重なヒントです。
表現に工夫を凝らして、感謝の気持ちを伝えられるスタッフを育てることが店長の仕事と言えるでしょう。
感情のコントロール:「まずは落ち着いて対応する」
どんなに理不尽な内容でも、冷静な言葉選びが基本です。これが実は、一番難しいことかもしれませんね。
言葉の“選び方”がすべて:「言い回し一つで結果が変わる」
これは本当に多くの現場で実感されていることではないでしょうか?
言い換えのテクニックやクッション言葉の引き出しを増やすことで、対応の質は確実に上がりますから、店長職にある方は、この引き出しを増やして共有する仕組みづくりをしましょう。