顧客クレーム対応の接客スキルを磨く。事前に確認しておきたいことまとめ。

顧客クレーム対応について 接客
顧客クレーム対応について

基本概要

クレームの対応は、店舗運営において欠かせないプロセスです。顧客の不満や問題が浮き彫りになる機会であり、それが解決されるかどうかが、顧客との長期的な関係に大きな影響を与えるからです。

しかし多くは「顧客が求めること」と「店舗が提供できるサービス」の間に乖離が生じ、いかにして顧客が求めるもの100%ではなく、店舗が提供できること100%で満足頂くことができるのか、がキーとなります。

顧客が求めることに対して全て「Yes」と言うことは、非常に楽な手段ですが、すばらしい対応とは言えません。顧客にまずは謝罪を示すとともに、状況の理解を促し、どのようなサービスなら顧客を満足させることができるかと、その時の注意点について考えましょう。

なおクレームの対応方針は個々の企業・店舗により異なることでしょう。それぞれ企業・店舗管理者の方針に従って、一貫した対応を取ることが大切です。ここで記載することは、全て一例に過ぎないことを認識しておく必要はありますが、日ごろのクレームについて考えるヒントになるかもしれません。

消費者行動に関する実態調査 によると、サービスや商品について、クレームを言った経験がある年代別TOPは50代、ついで60代、40代と、年齢が高いほどクレームを申し出る割合が高くなることがわかっています。

出典 : 消費者行動に関する実態調査 - 日本労働組合総合連合会
出典 : 消費者行動に関する実態調査 – 日本労働組合総合連合会

顧客クレームの種類を考える

一言にクレームと言っても、様々な種類があります。ここでは主に考えられる種類を6つ挙げておきましょう。

製品に対するクレーム(保証期間内)

製品の瑕疵、トラブルに起因するクレームは、誰もが経験したことがあるはずです。本来期待していた性能、サービスを受けることができないとわかった顧客は、購入した店舗、またはメーカーの相談窓口に駆け込むに違いありません。

その製品が保証期間内であれば、穏便に済ませることができるケースが少なくありません。瑕疵があった点を確認し、保証の対象となる症状であることを確認しましょう。お客様が乱雑に扱うなど、例外的なケースを除き、謝罪と共に新たな商品をお渡しすることになるでしょう。

製品に対するクレーム(保証期間外)

しかしすべてが保証期間内とは限りません。中には保証期間を大きく過ぎた古い製品を持ち込まれるケースもあるでしょう。

通常、保証期間を過ぎた製品に対するクレームは無償の修理や交換の対象外となることが多いはずです。
しかし、それでは顧客が納得しないことも少なくありません。
例えば購入後何年も経過しているにもかかわらず、購入してから数回しか使っていない場合は、事前に対応方針を店舗内で周知しておく必要があります。

同じく 消費者行動に関する実態調査 によると、「商品が不良品」と感じたときのクレームが第2位。接客従事者によるクレームとしては第1位であることも意識しておきましょう。

出典 : 消費者行動に関する実態調査 - 日本労働組合総合連合会
出典 : 消費者行動に関する実態調査 – 日本労働組合総合連合会

接客応対に満足しなかった、不満があった

接客やサービスの提供方法についてのクレームは、製品に比べれば保証すべき負荷は小さいものの、顧客の感情によるところが大きいため、「物を交換すれば終わり」とはなりません。

顧客は独自に「どの点が満足できなかったのか」という感情を持っているはずですので、その感情をしっかり受け止め、その結果を次にいかすため社内、店舗内で共有することが必要です。

価格が高すぎる、製品と見合っていなかった

多くの場合、価格に対するクレームは「購入前」に発生します。本来想定していたサービスや製品の対価と大きくかけ離れていた場合です。

「なぜその価格なのか」をスタッフが理解し、説明できる体制を作っておく必要があります。

購入後、価格に対するクレームが発生した場合は、顧客が「本来この価格の対価として得られると思っていたものが、得られなかった」と考えるべきです。

接客応対に問題があるケースも考えられるため、顧客がなぜそう感じたのかを深く掘り下げましょう。

納期の遅れ。予定されていた在庫やサービスが、手に入らない

このクレームの根本は、「適切なフォローができていなかった」結果と考えた方が良いでしょう。

いつまでに製品を納品できるのか、事前に伝えていた内容から変更があったにもかかわらず、連絡ができていないことで顧客から催促を受けて初めてその事実を伝える。

そのようなケースは最も避けなければいけません。
多くの場合、顧客それぞれにあった適切なタイミングで、納期の遅れが生じている旨の説明を丁寧に行えば、クレームへの発展を未然に防ぐことができることでしょう。

もちろんそれでも遅延によるクレーム、意見を頂戴した場合には、それがたとえ仕入れ先の都合であったとしても、セールスパーソンとして先頭にたってお詫びするしかありません。

身体的なダメージが発生した場合

最後にあげる例は、製品を使っていたことが原因で、身体にダメージを負ってしまったケースです。取り扱う製品の種類により、発生しやすい/しにくいがありますが、思わぬ理由でけがをされ、報告してくるものです。

最も深刻なクレームと捉え、最優先事項として対応にあたりましょう。
まずは顧客の身体の具合を心配し配慮すること、それから状況を詳しくヒアリングし、理解に努める姿勢を表すことが第一歩です。

クレーム対応の前に責任の所在を考えておく

顧客に対して直接伝える内容ではありませんが、社内においては事前に、ケースごとのおおまかな責任の所在を明らかにしておくことがおすすめです。それにより、店舗スタッフの必要以上の謝罪や、逆に顧客に対する謝罪の不足といった事態を軽減することができるでしょう。

ただしいずれの場合であっても、製品やサービスの責任が100%無くなることはありません
代金を頂いている以上、0か100かで考えることはできず、少なからず店舗の責任はあると考えるべきでしょう。

また顧客に不快な思いを与えている事や、貴重な時間を取らせてしまっていることは事実です。その点に関しては申し開きすることなく、丁寧にお詫びすることが求められます。

保証期間内の場合

保証期間内であれば、主に自身が製造者の場合は自身に、仕入れ先(メーカー等)などがある場合はメーカーの責任となることを視野に入れておきましょう。

保証期間外の場合

多くの場合は、店舗の中で対応を行うことになります。

ただ仕入れた製品であれば、クレームの質・程度により、客観的に見ても妥当な要求であれば、保証期間外であっても仕入れ先(メーカー等)に問い合わせることでサポートを受けられる可能性もあります。

顧客に対しては、製品の交換や無料の修理、あるいは特別価格での修理を提供できることが望ましいので、その条件を引き出せるよう店舗から仕入れ先に対して交渉する余地はあると考えら絵rます。

顧客自身の利用方法に起因する場合

意外と多いのは、症状や発生した状況を良くヒアリングしていくと、実は製品の瑕疵ではなく顧客自身の使い方に起因しているケースです。
このような場合、顧客目線の認識としては「通常通り使っていたら破損した」となりますが、店舗目線の認識では「通常使用の範囲ではない」となり、意見が相反することがありますので、どこまで対応するかケーススタディを作って共有しておくと役に立ちます。

顧客感情として納得できない

最後に顧客感情についても触れておきます。このケースでは、事実や製品瑕疵、責任や補填対応(金銭または物品)にかかわらず、感情として収まらない、というパターンです。

この場合は責任の所在がどうかはさておき、話に寄り添い、顧客を理解しようと努め、不快な思いをしたこと、気持ちは理解していることを伝えましょう。

ただ、”そうですね、私たちが悪かったですね”のように全面的に非を認めて寄り添う事と、”仰る気持ちや不快に感じた気持ちは理解しています”と寄り添う事は別です。
前者の場合、顧客との関係性によっては、後々のトラブルになってしまうこともあるので、表現には十分注意しましょう。

パターン別の謝罪方法

では実際に、どのような表現を使って謝罪することが良いのでしょうか。
クレームに対する接客に正解は無い、という前提をおきつつも、ヒントになりそうな例としていくつか挙げていきましょう。

事前の注意点として、下記のグラフが示すように「担当部署をたらいまわしにされる」「返答が遅い」などはさらなる2次クレームを招くことになります。担当者がその場で基本的な対応方針を伝えられるまで、情報の共有や教育を行っておく事が大切です。

出典 : 消費者行動に関する実態調査 - 日本労働組合総合連合会
出典 : 消費者行動に関する実態調査 – 日本労働組合総合連合会

まずはじめに、顧客のクレームを全てうけとめることが大切

何をどう対応するか、どのようなサービスを提供するか等の判断の前に、まず何より顧客が言っていることに真摯に耳を傾けます。

顧客が”話を聞いてくれない””説明しても意味がない”と感じてしまった時点で、その顧客は二度と戻ってきてくれないでしょう。

対応方法が事前に決まっているクレームだったとしても、いつどのような状況で、どのような問題があり、どう感じたのか、など顧客の意見を聞きます。
またそれらを、店舗内の情報として蓄積することが再発防止につながることは言うまでもありません。

“迷惑をかけている事” “不要な時間を割くことになった事”ことに対してお詫びをしよう

どのようなクレームであれ、代金を頂きサービスを提供した上で発生したケースであれば、店舗の責任は(比率はどうであれ)一定程度あります。
その中で、期待して購入した製品やサービスから、思ったような効果が得られなかった、トラブルによりすぐに使えなかった、など迷惑をかけていることは事実です。

さらには、写真を撮影したりメッセージを書いたり、店舗まで直接持ち込みに来たりと、貴重な顧客の時間をそのために割いている事にも配慮しなければなりません。

それらについては真摯に謝る姿勢が大切です。

製品の瑕疵である場合は、自身が製造者か、自身は仕入れ業者かにより判断しよう

自身が製造者である場合には、なぜそれが起きたのか、きっと詳しく理解ができるはずです。製品の仕様や特徴、問題点などを鑑み、丁寧に説明を尽くしましょう。

仕入れ先(メーカー等)からの製品であった場合には、まず知識の範囲で丁寧に説明することが求められますが、それ以上に判断が難しい症状であった場合には、無責任な推測で話をすすめることは、さらなるクレームを生むことになります。

“一度お預かりして、確認させて頂きます”など、一旦時間をおき、確実な情報を集めてから対応する方法が良いかもしれません。

保証期間と保証範囲を的確に案内しよう

製品やサービスごとに設けられた保証期間については、まず正確に把握しておく必要があるでしょう。期間内外によって、顧客に対して提案できるサポートが大きく変わってきます。

ただし期間内であっても、”保証の範囲内外”の問題があります。顧客が主張する状態が、保証の範囲内なのか、範囲外なのか。事前にガイドラインを策定しておくとともに、店舗運営の中で蓄積されたクレームケースをまとめ、店舗内の従業員全員に周知できるようなコンテンツを作っておくと便利です。

製品クレームの問題と、送料、の問題は別に考えよう

店舗運営、特に初期の小規模段階では、少しでもコストは抑えたいものです。送料もそのうちの一つです。顧客クレームだから全てのやり取りを、送料全て負担して行う…というケースについても一度考えておいた方が良いかもしれません。

製品のクレームは、当然ですが”製品の質がどうか”と紐づきます。
仮に保証の期間内・範囲内であり、修理の費用や交換の費用は全て負担するとしても、そこで生じる送料は製品の質とは無関係です

近隣の方へ800円程度で発送できるからと言って、クレームにかかわる送料負担を当然としてしまった場合、「どの程度遠くまで、無料でサービスするのか」「海外在住の方からクレームでも高額な送料を負担すべきなのか」「XXまでは無料でXXからは有料、の基準は何なのか」という問題に発展します。

  • サービスの一環として、余計なトラブルを生まないための送料まで負担する。
  • 保証はあくまで製品に付随するため、配送によるやり取りを希望する場合は送料を頂く。
  • 折衷案として、お互いに元払いでのやり取りを依頼する。

など、一定のガイドラインを作っておくとよいでしょう。なお1000円までは負担する、という仕組みにしてしまうと、1080円のような送料だった場合、80円だけ負担を要求するといった微妙な対応になりがちです。

さらに追加の補填を求められた場合にそなえよう

クレームがクロージングに向かっているとき、最後に顧客から、追加の補填(金銭、物品)を要求されることも少なくありません。この対応については、多くの場合、店舗の方針次第ですが、簡単な例として、下記のような基準を作っておくと役に立つかもしれません。

  • 対応している従業員の判断で、差し上げて良いものを事前に決めておく
  • 同じく対応する従業員の判断で、サービスして良い金額の上限を事前に決めておく

    これにより、”上司に確認します”等の時間をかけず、スムーズにクレームをクロージングできる可能性が高まります。
  • 追加の補填は禁止されており、出来ないことを明確に伝える。

    この方法の場合には、理由を添えるとより効果的でしょう。例えば “個人の気持ちとしては、何か製品を差し上げたいが、その製品に対し、代金を支払って購入している他の顧客への配慮もすべきなので無料で差し上げることはできない”のような内容です。

上司を出せ、に対する対応限度を決めておこう

クレームのエスカレーションは適切に行うべきであり、上司の対応が必要であれば、正確に内容をひきつぎ、より権限のある従業員が対応するのは当然と言えます。

しかしここでは、「どこまでエスカレーションが可能か」について定めることも、一度考えてみると良いでしょう。

実務の中では、これ以上上司を出せない、または、上司を出したところで気持ちの面では収まるかもしれないが、対応方針は変わらない、というポイントがあります。
“本件の最終責任者は私ですので、不満に感じられるかもしれませんが、引き続き私が責任をもって対応に当たらせて頂きます”のように、失礼無い表現とあわせて、上司を出す限度についても見直しておきましょう。

特別対応すべきケースの例を共有しておく

様々な例を見てきましたが、ここにあてはまらない、”特別対応””例外対応”が求められるケースもあるでしょう。そのような場合には、責任者の判断に従い対応するのみです。

その際、責任者に対しては顧客独自の要素、ケースが特殊である理由を添えて特別対応の承認を引き出すこと、および顧客に対しても”特別な対応であること”を明示したうえで、サポートを提供する方が良いでしょう。

まとめ

今回はクレーム対応の基本、概要、接客時のポイントについてみてきました。すべては一例であり、個々の店舗によって方針が異なることはずです。これらをヒントに、今一度対応方針を洗い直し、検討してみてはいかがでしょうか。

効果的な対応は、顧客満足度の向上につながります。顧客は自分の問題が解決され、その声が尊重されると感じることでしょう。さらには、店舗が改善に取り組む姿勢を見ることで、その店舗に対するロイヤリティが高まることもあり得ます。
ロイヤリティの高い顧客を増やすことで、リピーターとしての行動が増え、店舗の長期的な成功へとつながることは間違いありません。

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