新人教育 | 店長が最初に伝えるべき「数字の話」入門ガイド

新人教育 店長が最初に伝えるべき「数字の話」入門ガイド 店舗管理

店舗運営において、数字の理解は避けては通れない重要なスキル。特に新人スタッフが「売上を上げるために頑張ろう!」と意欲的に働き始めたタイミングで、最初に数字の基本を教えることは、長期的な店舗経営の安定にもつながりますよね。

新人教育の場で必ず伝えておきたい店舗運営にまつわる数字の基本について、丁寧に解説していきます。

なぜ「数字」が重要なのか?

売上やコストなど、数字は店舗の健康状態を映し出す鏡です。しかし、数字というとどうしても苦手意識を持つ新人も多いかもしれません。

まず最初に、数字を理解することで得られる実務上のメリットを整理してみましょう。

数字を知れば、売上の仕組みが見えてくる

新人にとって売上という言葉は漠然としがちですが、「売上=客数×客単価」という基本式をまず教えてあげることで、構造的に理解しやすくなります。

「お客様が何人来たか」と「一人あたりどれだけ購入してくれたか」に分けて説明すると、売上の変動要因が具体的に見えてくるはず。

業務日報などを使って、自分で数字を確認する習慣も教えられると良いですね。

数字の裏にある「現場の動き」を知る

数字は単なる結果ではなく、その裏には必ず現場の動きがあります。

たとえば「今月の売上が落ちた」とき、数字で伝えるため、新人には「来店数が減ったの?成約率が下がったの?それとも客単価が下がったの?」など、定量的に原因を考える視点を与えるのがコツです。

具体的な場面とセットで数字の変動を伝えることで、数字に対する感度も自然と高まっていきます。

店長やマネージャーとの共通言語になる

数字を理解しておくことで、上司とのコミュニケーションも格段にしやすくなります。

新人には「数字を使って報告すると、相手もすぐ状況を把握できるよ」と教えてあげましょう

「今日の客数は〜人で、客単価は〜円でした」と伝えるだけで、仕事ぶりがより評価されやすくなりますし、改善提案も具体的になりますよね。

まずは「売上」の中身を分解してみよう

新人にとって「売上を上げよう」と言われても、何から始めれば良いのか分からないことが多いものです。

そんなときに使える次の簡単な式を元に、解説していきましょう。

売上=客数(販売件数)×客単価

このシンプルな公式をベースにすれば、自分がどこを意識すれば売上に貢献できるのかが分かりやすくなりますよね。構成要素をより具体的に紐解いていきます。

客数(販売件数)を増やすには?──「チャンスの数」を数値で理解しよう

※ここでの客数とは、来店数ではなく、販売した顧客数 = 売上件数として扱いたいと思います。

来店数は「チャンスの数」と言えますが、より実践的には「来店者数に対して何人が購入してくれたか」という成約率(コンバージョン率)で考えることが大切です。

たとえば、1日あたりの来店者が100人で、実際に購入したのが40人であれば成約率は40%。
そうすると

「あと10人購入者を増やすには、成約率を50%に上げるか、来店者数を125人に増やすか」

といった具体的な戦略が立てられます。

新人教育ではこの考え方を使って、「接客1件の重み」を実感させ、挨拶の声掛けや導線づくりなど、改善のアイディアを一緒に考えていくと良いですよ。

客単価を上げるには?──商品点数×商品単価で考える

客単価は「1人あたりがどれだけ買ってくれたか」を示す指標ですが、これをさらに分解すると

「商品点数 × 商品単価」

となります。

たとえば、1人のお客様が平均2点の商品を購入し、1点あたりの価格が3,000円であれば客単価は6,000円です。
つまり、客単価を上げるには、購入点数を増やすか、より単価の高い商品を選んでもらう工夫が必要ということですね。

セット販売や関連商品の提案、ワンランク上の商品を紹介するなど、日々の接客の中でできる工夫はたくさんあります。「あと1点いかがですか?」という一言で、大きく変わる事もあるでしょう。

売上=客数×客単価──基本公式を実務に落とし込もう

売上は「客数×客単価」という非常にシンプルな公式で表されます。

けれども、その中身には多くの改善ポイントが潜んでいます。

たとえば、客数は「何人来店したか」だけでなく、「何人に接客できたか」にも左右されますし、客単価は「購入点数×商品単価」に分解できます。

つまり、売上を上げたい場合は、①来店者数を増やす、②成約率を上げる、③商品点数を増やす、④より単価の高い商品を提案する、といったアプローチが考えられるということですね。

新人にはこの数式の意味をきちんと理解させ、「売上アップ=工夫次第で自分にもできる」と実感してもらうことが、教育上のカギになります。

コストを知らずに売上だけを追うのは危険?

売上を伸ばすことは大切ですが、利益を残すには「コスト」の理解も欠かせません。新人にとってはやや難しく感じられるかもしれませんが、ここでは実践的に伝える方法を紹介します。

原価とは何かを知る──原価率と利益率の基本も理解しよう

商品の価格には、必ず「原価(=仕入れ値)」が存在します。売上を語る上で、いくらで売れても、仕入れにかかるコストがわからなければ利益は見えてきません。

より具体的に原価に関する考え方を見ていきましょう。

原価率とは?基本の計算式を知る

原価率=原価÷販売価格×100(%)

という計算式は、利益構造を理解する第一歩です。

たとえば1000円で販売する商品を500円で仕入れている場合、原価率は50%となります。数字が高ければ高いほど利益が少ないということになりますので、商品戦略や値引きの判断に活用できます。

原価が不明なときの目安設定

企業によっては、仕入れ価格などの具体的な原価情報をスタッフに公開していない場合もあります。そのようなときは「うちの店の平均原価率は◯%くらい」といった社内基準を用意しておくと、新人でも感覚を掴みやすくなります。

たとえば、アパレル業界であれば原価率は30〜40%が一般的な水準とされています。(出典 : 2023 年経済産業省企業活動基本調査確報(2022 年度実績)

利益率との違いと考え方

利益率は

利益÷販売価格×100(%) または 100% - 原価率(%)

で表され、粗利の割合を示します。

1000円で販売した商品の原価が600円なら、原価率は60%ですが、一方で利益は400円なので利益率は40%ですよね。

新人には「売上が高くても利益が薄ければ意味がない」という基本的な商売感覚も合わせて伝えておきたいですね。売上だけを見ず、原価と利益のバランス感覚を持つことが、店長やマネージャーへのステップアップに欠かせない要素です。

結論として:利益を残せる店を目指そう

売上があっても、コストがかさめば赤字になります。逆に、コストを抑えすぎて現場が疲弊しても継続できません。適正なコスト感覚を養い、利益をきちんと残す店が「良い店長」の第一歩だと言えるでしょう。

時間帯別売上・客数分析で見えてくる改善チャンス

同じ1日でも、時間帯によって来店数や売上構造は大きく異なります。この変化を数字として見える化することで、接客の仕方や販促の組み方、シフト配置の最適化まで、多くのヒントが得られますよ。

時間帯別の傾向を見てみよう

まずは来店数と売上を、時間帯ごとに区切って見てみることから始めましょう。たとえば、11〜13時はランチ前後でフラッと立ち寄るお客様が多く、客数は多いけれども単価が低い。一方で、17〜19時は仕事終わりの買い物で客単価が高い──など、時間帯ごとに傾向は異なります。

具体例:時間別の改善シナリオ

例1:14〜16時の売上が落ちている

来店数が少なく、売上全体が低迷しがちだとします。

するとこの時間に注目すべき指標は「成約率」と「客単価」

たとえば、来店数10人に対して購入者が3人であれば成約率は30%。ここを40%に引き上げるだけでも売上は改善されます。
また、1人あたりの購入点数が少ない場合は「セット率」を高める提案トークを強化すると効果的です。

この時間、店内は空いているはずなので1on1の接客サービスを訴求したり、タイムセールや限定POPで来店動機、成約動機をつくるなどが効果的になるかもしれません。

例2:18時台は客数はそこそこでも売上が高い

このような時間帯は、オーガニックに、成約率や客単価やセット率が高く出やすい傾向があります。

新人教育では「この時間は、他の時間帯と比べて、客単価が〇〇円違うよね」「販売件数が〇〇件違うよね」「だから成約率をあげるように、なるべく接客数を増やすとこんな試算になるよ」のように伝え、クロージングやアップセルの実演時間にあてると良いですね。

例3:11〜13時は来店は多いが、売上は伸びない

このように、来店数は多いのに売上が伸びない場合、「成約率」や「商品単価」に課題があるケースが多いと言えます。

このような傾向の時間帯は、短時間滞在のお客様が多いこともありますから、「時短で買える工夫」や「即決しやすい商品配置」がポイントになります。「すぐ買えて、すぐ使える」商品を目立たせ、買い物のハードルを下げる演出が効果的ですよ。

これも数値を元にして新人スタッフには理解してもらい、「だからこういう行動が大切」と、対策の背景を伝えると業務に対する理解も深まるでしょう。

データを活用して考える習慣を育てよう

レジデータや日報を使って時間帯ごとの動きを数字で見せることは、新人にとっても大きな学びになります。「この時間は人が多い/少ない」ではなく、「だからこう工夫しよう」という考え方ができるようになると、数字を“使いこなす”段階に一歩踏み出せますよ。

数字を通して「自分ごと」に変えていくには?

最終的に、数字の話を聞いて「それって自分の仕事に関係あるの?」と思われてしまったらもったいないですよね。数字を単なる報告や結果ではなく、「行動を変えるヒント」として捉えることが、新人の成長には欠かせません。

数字が行動を変える起点になる

「客単価が前週より下がっている」「この商品は接客件数に比べて成約率が低い」など、数字を見れば現場の課題が浮かび上がります。

たとえば「あと1点の提案ができれば客単価はもっと上がるかもしれない」という仮説が生まれたら、それをもとに接客スタイルを少し変えてみるなど。

成功体験が知識と意欲に変わる

数字をもとに施策を実行し、結果が改善されたときの達成感は、新人にとって大きな自信になります。

たとえば「客単価をあげるには?」と考えて、レジ前にセット売りを訴求するPOPを出したとします。
「そうしたら本当に客単価が〇〇%あがった」などといった体験は、「自分のアイディアが売上に直結するんだ」という実感につながり、主体的な行動を促してくれます。

PDCAサイクルを回す習慣をつくろう

数字 → 行動 → 結果 →見直しという流れを繰り返す「PDCAサイクル」は、数字を使って考える力を育てる最良のフレームです。
新人時代からこの習慣を身につけることで、将来マネージャーや店長になったときにも、問題解決力や戦略的な判断力が活きてくるでしょう。

このPDCAサイクルも、定量的な情報、数字を元にまわすことで「結果がYESかNOか」も明確になりおすすめですよ。

新人教育の最初の一歩で「店舗経営には数字が大事なんだ」と気づけることは、非常に価値があります。売上、予算、コストという店舗運営におけるキーワードを、できるだけ日々の業務と結びつけて教えることが重要ですね。

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