在庫回転率とは
一定期間内に在庫が何回転するかを示す指標であり、効率的な在庫管理や、販売効率の評価に使用されます。
在庫回転率を確認することで、現在の店舗の在庫状態が健全かどうかを知ることができます。それにより、適切な在庫量を維持し、在庫コスト抑制につなげられることでしょう。
簡単に言うと、在庫が過剰であると、保管費用や陳腐化リスクが増加します。一方、在庫が不足していると、販売機会を逃すリスクがあります。
適切な在庫回転率の把握は、これらのリスクをバランス良く管理するために重要な指標と言えますから、店長のスキルアップのため、この記事で細かく考えていきましょう。
在庫回転率を確認する目的
販売効率の評価
在庫回転率は、一定期間内に在庫がどれだけ回転したかを示す指標で、販売効率を評価するための重要なデータになります。
高い回転率は、商品が迅速に売れ、在庫の滞留が少ないことを示し、企業の販売活動が効果的に行われていることを意味します。
そして何より、店舗の在庫高情報があれば、比較的容易に計算することができる、簡単で効果的な健康診断と言えます。
在庫管理の最適化
在庫回転率を確認することで、適切な在庫量を維持し、在庫コストを抑えることができます。
在庫が過剰であると、保管費用や陳腐化リスクが増加します。
最初に書いたように、店舗運営ではこの「リスクのバランス」が大切になりますし、その管理は店長の責任でもあります。正しく把握して最適化につなげましょう。
資金効率の向上
在庫は企業の資金を固定化させてしまう、ネガティブ要素の一つです。
高い在庫回転率は、在庫に固定されている資金の回転が速く、資金効率が高いことを示します。
これにより、店舗(会社)は他の投資機会に資金を効果的に振り向けることができ、経営の柔軟性が向上します。
しかしその逆、低い在庫回転率は、店舗(会社)に資金が足りず、現金化できていない、固定化してしまっていることを表します。
需要予測の精度を上げる
過去の在庫回転率データを分析することで、需要の変動パターンを把握し、将来の需要予測の精度を高めることができるでしょう。これにより、適切な仕入れ計画を立てることができ、無駄な在庫を減らし、効率的な管理が可能になります。
特に定番商品については、昨年の結果を元にしてシーズン在庫の用意をしたり、シーズン途中でも昨年と比較することで需要が予定通りか、それとも在庫が滞留しつつあるかを知ることができます。
業績評価
在庫回転率は、会社内の業績評価においても重要な指標とすることができます。結果を見直すことで、店長のスキルアップも可能です。
過去のデータとの比較を行うことで、実情を明確にし、評価につなげるとともに、合わせて適切な改善策や戦略を考えるきっかけにもなるでしょう。
在庫回転率の計算式
在庫回転率は以下の2つの方法で計算できます。計算スキルを身につけておきましょう。
計算式の概要
売上原価ベース:
\[ \text{在庫回転率} = \frac{\text{売上原価}}{\text{平均在庫}} \]
売上高ベース:
\[ \text{在庫回転率} = \frac{\text{売上高}}{\text{平均在庫}} \]
各変数の意味
- 売上原価:期間内に販売された商品の原価。これには材料費、労務管理費などを含める場合があります。
- 売上高:期間内の売上金額。
- 平均在庫:期間内の在庫の平均値です。一般的には「期首」と「期末」の平均を取ります。
\[ \text{平均在庫} = \frac{\text{期首在庫} + \text{期末在庫}}{2} \]
計算結果が高いとどうなる?低いとどうなる?
- 在庫回転率が「高い」:在庫が効率的に回転しています。販売効率が高く、在庫の滞留が少ないことを意味します。ただし、過度に高いと在庫不足による機会損失のリスクもあります。
- 在庫回転率が「低い」:在庫の回転が遅く、在庫過多の可能性があります。在庫コストの増加や陳腐化のリスクがあります。
「売上原価ベース」と「売上高ベース」どちらが推奨?
在庫回転率を計算する際、売上原価ベースと売上高ベースのどちらを使用するかは、目的や業界によって異なりそうです。ここでは「大体の」目安を記載しますので、参考にしてみましょう。
売上原価ベース が推奨される場合
メリット
- 正確な在庫コストが反映される:売上原価は、実際の製品のコストを反映していますから、在庫の実際の”価値”をより正確に把握できます。
- 会計との整合性:会計基準では売上原価と在庫評価が直接関連していることも多いため、売上原価を用いることで会計との整合性が取れます。
推奨されるケース
- 製造業や小売業:在庫のコスト管理が重要な業界。
- 財務分析:企業の効率性を評価する際に、財務指標の一部として使いたい場合。
売上高ベース が推奨される場合
メリット
- 市場の需要に近い:売上高を基準にするので、市場の需要に対する在庫の回転を直接評価、把握できます。
- セールやディスカウントの影響がわかる:一般的に、極端なセールやディスカウントを行うと在庫の変動に対して売上高が伸び悩み、在庫回転率が低くなる傾向があります。
- 簡単な計算方法:店長の立場であれば、売上高は簡単に取得できますので、何より計算が簡単です。
推奨されるケース
- マーケティングや営業分析:販売活動の効率を評価する際に役立ちます。
- サービス業や販売業:在庫の価値よりも、販売活動に重点を置く場合におすすめの方法です。
在庫回転率に必要な「期首」「期末」の考え方。期間はどの程度が適切か。
在庫回転率の期間の選択は、これもまた、企業のビジネスモデル、在庫や製品の特性、によって異なります。そのため各店舗(会社)の状況に応じて判断が必要ですが、おおまかには次の通りだと考えられます。
1年間~
メリット
- 季節変動を平準化できる:年間を通じてのデータを使用することで、極端な需要変動や、季節的な需要変動を平準化できます。
- 長期トレンドを把握できる:1年間~のデータを使うことで、長期的なトレンドやパターンを把握しやすくなるでしょう。
推奨されるケース
- 季節商品を扱う業界:ファッション、小売、食品など、季節変動が大きい業界。
- 長期的な計画を立てたい場合:年間計画や予算編成に役立ちます。
3~6ヶ月
メリット
- 迅速に対応できる:短期間のデータを使用することで、在庫管理や販売活動をクイックに調整できます。
- 短期間の分析:短期間での特定のイベント、季節変動の分析、キャンペーンの影響、を分析しやすくなります。
推奨されるケース
- 流動性の高いビジネスモデルの会社:市場の変化に敏感な業界、頻繁なプロモーションを行う業界や会社の場合。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
在庫回転率の目的から、具体的な計算方法。それから「売上原価ベース」か「売上高ベース」かを考える時のポイントを見てきました。
もちろん企業のニーズやビジネスの特性に応じて異なりますが、大体のガイドラインは次のようなイメージかもしれません。
- 季節変動が大きい場合:1年間のデータを使って平準化してみる。
- 迅速な在庫管理が必要な場合:3-6ヶ月の短期間データを使用して、クイックに対応する。
- 業界標準やベンチマークを知る:付き合いのある同業他社から情報をもらい、参考してみる。
短期視点も重要ですが、年間データも併せて使用することで、長期的なトレンド分析や計画立案にも役立つため、両方の視点で考えることが重要です。
まずは、自分の店舗のベストな在庫回転率を知ることから始めるといいでしょう。また特に、様々な商材を取り扱っている場合には、カテゴリ毎やブランド毎に分けて出すこともお勧めです。